この愛を欺けるの

応援スタンスや長文考察や好きなものの分析をするところ

田口くん脱退に見る、自担の仕事を否定してはいけない理由

結論を先に言っておきたい。ジャニーズタレントのファンであるならば、自担に来た仕事はすべて応援すべきだ。

自担のこういう姿が見たい、こんなアイドルでいてほしい、という要望があるならば尚更、それに反する仕事であっても一度はとにかく応援し、可能な限りの購買行動をすべきなのだ。なぜなら、彼らが商品であることを辞めてしまった瞬間、私たちは買うべきものすら失ってしまうのだから。

 

時々、自担の年収について考える。デビュー組の中堅以上なら、ある程度は歩合制だろう。出演料とリリース売上の何割か、コンサートの売上。そこから宣伝費や人件費を引いて、事務所と分け、更にメンバー人数で割る。私の大好きな人は一体どれくらいの生活レベルで暮らしているのだろう。

田口くんがKAT-TUNを辞めると発表した時、私はふと、A.B.C-Zの塚ちゃんの言葉を思い出した。夏頃に見たインタビューで、塚ちゃんが「金欠の時もある」と言っていた。「家賃が数千円足りなかった」(記憶が曖昧、確か2千円ぐらいだった覚えが)と。天下のジャニーズタレントが、数千円という単位で金欠になるなんて…と、衝撃を受けたのを覚えている。

2006年、あれほど派手にデビューしたグループはSMAP以前まで遡らなければならないのではないか。世の中じゅうがKAT-TUNに沸いていた。時代を変えるようなエネルギーすら感じた。ジャニオタにとってKAT-TUNは伝説のグループだ。ついついKAT-TUNというブランドとして見てしまう。

だが、ここ数年KAT-TUNのシングルCD売上は累積でも20万枚を切っている。冠番組は24:50~の30分番組。亀梨くん1人の業績はじわじわ伸びているが、それでも最近目立ったドラマのヒットは妖怪人間ベム以来なく、グループ単位では低空飛行と言うしかない。今が低いというより、デビュー時が高すぎた。

 

ジャニーズ事務所は、売上がふるわないからといって解雇にはならない。その安定した身分を捨てるのは、相当に大きな決断だ。当然、給料について考えないわけがない。普通に考えれば、給料が下がるなら転職のブレーキになるし、上がるなら反対に後押しになるが、KAT-TUNを出て、給料が上がるなんてことがあるだろうか。恐らくないと思う。

けれどジャニーズであること、グループであることは「枷」でもある。もし収入に変化がないのであれば、転職によって安定性と引き換えに自由度は上がるだろう。そこを取るのだとすれば、転職が魅力的に思えることもあるかもしれない

彼にとって、ジャニーズ事務所から受け取る給料は、転職を思い止まる理由にはならなかったのである。

 

言うまでもないが、仕事が多ければそれだけ給料も多くなる。私たちがアイドルの仕事を気に入らなかったとき、もし仮に望んだ通りその仕事が無くなったら、その分彼らの収入は減る。そして私たち消費者が売上や評判、視聴率などという形によって、彼らの仕事を奪うことは不可能なことではないのだ。裏を返せば、購入する、評価する、見る、話題にするという消費者の行為ひとつひとつが、彼らの収入に繋がってもいる。

アイドルに、転職を考えさせないだけの収入があるだろうか?転職が頭を過ぎった時、アイドルであることが苦痛になった時、何らかの事態が起こった時、思い直し立ち上がるだけの収入が彼らにあるだろうか?それを願わないのであれば、アイドルが「辞める」と発表しても、悲しむことすらできない。

私たちは自担の仕事が気に入る気に入らない以前の問題として、彼らの収入を心配すべきだ。彼らにアイドルでい続けてもらうために、私たちに唯一できることは「金を使うこと」なのだ。

 

ジャニオタにとってKAT-TUNは伝説のグループだ。現代ジャニーズの歴史はKAT-TUNなくしては語れない。KAT-TUNがデビューの勢いのまま2~3年続いていたなら、今のSMAPも嵐もなかったのではないか。そしてKAT-TUNの栄光と失速がなければ、今のキスマイは絶対に生まれなかった。関ジャニが突出してくることもなかったかもしれない。ジャニーズJr.という市場自体、黄金期を終えると共にもっと縮小していた可能性もある。

どこかで、「あのKAT-TUN」という意識があった。4人になって、セールスで言えば相当落ちているのはわかっていたのに、私は今回の発表があるまで、どこかでKAT-TUNというブランドを信じていたのだ。

決然とした田口くんの表情を見てやっと、KAT-TUNは、私が思っていたような生温い状況にはいないのだと気が付いた。ジャニオタの中でいくら高い評価を受けていても、だから安心などと思ったら大間違いなのである。反対に、誰にいくら叩かれようが視聴率やセールス枚数は裏切らない。興業がビジネスである以上、その価値は金額で判断される。

 

ジャニーズ事務所は、ちょっとやそっとではデビューさせたタレントを解雇しない。新人も、絶頂期が過ぎて売れない者も、ずっと事務所に置いて仕事を与える。また、ジャニーズJr.からは一切レッスン料を取らずに先行投資として育成する。そのために、デビュー組は利潤を上げるという使命を持っているのだ。しかし現在、デビューしてすぐにそれほどの利潤を上げられるグループ・タレントは少ない。

デビューから10年、15年と経ってから大きな利益を生むグループに成長することもあるので、事務所はこのシステムを未だ続けている。そして現状、SMAPや嵐の出す大黒字によってこの仕組みを支えている。これにより、基本的にデビュー組が食いっぱぐれることはない。これには先行投資の意味合いだけでなく、テレビ局や業界から「ジャニーズのタレントは潰れない」という信頼を得るためでもあると思う。

結果、ジャニーズ事務所では中堅と呼ばれるグループが非常に多くなってしまった。数年前までならV6も中堅と呼ばれただろう。KAT-TUNの失速に伴いキスマイが力を付けたため、Jr.市場が想定ほど縮小しなかったことも要因だと思う。

 

中堅=嵐より下~デビュー3年以上と定義しても、タキツバ、NEWS、関ジャニKAT-TUN、ジャンプ、キスマイ、セクゾ、えびと、8グループも存在する。人数にすると43人。ソロ活動する者も含めれば更に多い。この43人のうち、2015年12月現在で31歳(嵐より下)~26歳(現在の最高齢デビュー年齢)の者は17人。山下智久という大物と並ぶこの世代にとって、あと僅かな席を取り合うことは運命付けられている。この年齢から、事務所が今以上に大きく推すということも難しくなってくるだろう。

ジャニーズにおいて現在この年代がどれほど稼げば合格ラインなのかという線引きは不明だが、ハードルを低く見積もっても、半数程度しか合格ラインに達していないのではないかと推測している。その半数も、自らにかかるコストや先行投資してもらった分を充てるだけで精一杯ではないだろうか。

中堅では採算が取れず、ベテランの売上を当てにしなければならない。そのうち例えば半数がベテランとしてやがて稼げるようになったとしても、残りの半数はこのまま売り込みを続け、トントンか微赤字のまま抱えていかなければならないのである。

 

そんな状況のなか、抱えているタレントに「辞めます」と言われたらどうだろうか?必死に引き止める?グループにはお前が必要だと言う?残念ながら現実はそこまで甘くない。

「別にいいよ。ただ残ったグループの立て直しだけ考えたいから、時間ちょうだいね。」という程度だ。

田口くんがどれほど稼げていたかを検討するつもりはない。だがジャニーズ事務所は、田口くんの退所に合意したのだ。もしも田口くんが退所されたら大損失だというタレントだったなら、事務所の対応は全く違って、かつての森くんのように必死で引き止める・退所を許さない方向なっていただろう。それを振り切って退所することと、引き止めるでもなく退所に合意するのでは全く違う。

もしも事務所から反対を受けたのなら、あんなに穏便に退所を発表することなど出来ない。事務所から裏切り者と見做され、退所した後で芸能活動をするのは絶望的だ。それを振り切らなければ退所出来ないとなれば、退所を考え直すかもしれない。気に入らない点があるならば改善に向けて交渉する余地が生まれたかもしれない。しかし事務所に退所を認められてしまったら、交渉の余地もない。

自担はジャニーズにとって重要なタレントだろうか?もし自担が退所したいと言った時、事務所は引き止めてくれるだろうか?

 

全く同じ理由で、新規ファン優遇策や新規ファンを敵視することも間違っている。ファンクラブ料金は、名簿維持費など考えれば、会報が届く・コンサートに申し込める・メールで情報が届くという特典で十分見合った料金だ。年会費4000円は、これ以上の優遇を望むほどの金額ではない。固定ファンより、ちょっと興味が沸いた新規ファンがコンサートで更に好きになってくれるほうが、これからの購買力になる。新規より古参ファンがコンサートに行くべき、と語る人もいるが、古参ファンがこれから2倍金を使うということは考えにくい。一方新規ファンは、これからいくらでも金を使う余地があるのだ。

新規ファン歓迎・自担の仕事応援。これがファンの最も重要な仕事である。

田口くんを事務所に繋ぎ止める方法が唯一ファンにあったとすれば、もっともっとファンを増やして今の何倍も金を使うことだった。しかしそれは個人の力では難しい。どうしたって事務所の「推し」は限られている。プロモーションの力が大きい。

だから自担に売れてほしい。実力があるかなんて、顔が綺麗かなんて、売れている人が本当にそんな理由で売れてるかどうかなんてわからないし、それは私たちが考えることでもない。ただ売れて欲しい。実力がなくても歌が下手でも滑舌が悪くても、推されてファンが増えて売れて欲しいのだ。それはもうどんなに実力が足りないと言われたって、その人を好きになってしまったのだからどうしようもない。(横尾担は常に新規ファンを歓迎します!!!!

 

消費者であるファンには自由がある。必ずしも大金を落として文句を言わない優良なファンでなければいけない「義務」ではない。ただ、もしネットで悪評を書き立てる悪質なファンでいることを選択するならば、それはアイドルを事務所から退所させる要因になってしまう可能性があることを念頭に置くべきだと思う。

もちろん、アイドルにそこまで肩入れすることはない。良いと思うものだけを買い、好みでなかったら「買わない」ことを選択すればいい。購買行動こそが意思表示だ。だが、採算が合わないという理由で活動が制約を受けたり、アイドルがアイドルであることに苦痛を感じることはリスクとして存在する。

そしてもともと、それがアイドルという商売だ。「俺が困らないようにお金を使ってね!」という、身も蓋もないが、ホステスの色恋営業と仕組みは同じ。高校生ならいざ知らず、少しでも経済活動に携わっている大人なら、そんなことはとっくにわかっていてアイドルを好きになるべきなのだ。大人なのだから。

歌うこと、表現の感情と技術

11月24日、ベストアーティスト2015でKAT-TUNがパフォーマンスした、Dead or Alive。田口くんが脱退を発表した直後。メンバー3人の様子から見るに、彼らは「ここで言わせさえしなければ」と思っていたように見える。3人にとっては、遂に「3人のKAT-TUN」に向かって動き始めてしまった、その1曲目なのだ。

ジャニーズの歌は、そのグループのストーリーが乗ることがある。KAT-TUNのBirthは「赤西仁との決別・再生の歌」と言われた。SMAPのベストフレンドは流れるだけで中居くんが涙ぐむ曲として有名だ。NEWSのフルスイングや愛言葉は端からそれを狙った楽曲だし、キスマイのFire Beatは彼らのハングリー精神を象徴している。Dead or Aliveは確実にそういう曲になる、と感じた。これは田口くんとの別離の歌だ。例えるなら、3人のKAT-TUNにとっての「フルスイング」だ。

そのDead or Aliveで、私は今までKAT-TUNで見なかったものを見た。亀梨くんは音程を外していた。上田くんは涙声だった。中丸くんはほとんど踊れていないと言ってよいほど動揺している様子だった。こんなKAT-TUNは初めて見た。KAT-TUNとは、どんな時も安定したクオリティを見せてくれるグループだと思っていた。その彼らのこんな姿は、この10年で初めて見るのではないだろうか。特に鳥肌が立った部分がある。

「時が終わるまで I' ll never let you go alone 挑んだGAMEはリセットできない 背負う闇も連れて」

歌詞がハマり過ぎだ。まるでこの時を予期して書かれたのではないかと錯覚するほどに。こういう運命めいたものを見るのはショーの醍醐味だと思うが、これはなかなか残酷だった。きっと亀梨くんも歌いながら、この一文を和訳したに違いないと思っている。語尾が震えた。そして息を大きく吸って、次のハイトーンを歌った。歌ったというより叫んだ。泣き叫ぶように放った。亀梨くんはさほど音域の高い人ではない。高温になると声が細くなったり、不安定になってしまうこともある。けれどこの時、彼の声は力強く伸びた。そこにはどうしようもない感情が強く強く乗っていて、思わず涙が出そうになった。

表現者にとって、表すべき感情を持っていることは財産であると思う。しかしそれを、表現する都度にコントロールして常に同じように表すことは難しい。KAT-TUNは、常にプロとしての表現を出すグループだった。少なくとも私にとっては。だからこそ、生の感情がそのまま乗った歌は、とてもKAT-TUNらしくないと思った。

けれど私はこの類の生々しい感情そのままな表現が、結構好きだ。そういうものがショーの良さのひとつの形だと思っている。今まであまりKAT-TUNの表現そのものに惹かれたことはなかった(楽曲や踊りや歌は好きだ)が、この亀梨くんの大サビは、震えるほど良いと思った。今までのKAT-TUNとは違う種類の良さだ。

 

と同時に、この種類の良さには物凄く見覚えがあった。「藤北感」だ。
藤ヶ谷くんと北山くん。キスマイのパフォーマンスにおける不動のツートップ。彼らは常に全力だ。疲れてくるほどむしろ必死さに拍車がかかる。いつも何でそんなに全力なのかわからないのに、千切れそうに必死で、意味もなく泣きそうになるほど頼りなくて、力強い歌声。地の底から恨み節でも言うみたいに歌い叫ぶ姿に、時々、ステージ上で死んでしまわないかと本気で心配になる。
彼らがシンメでお揃いに持ってるわけのわからない切迫感と同じ種類のものを、あの瞬間、亀梨くんが確かに放っていた。そんなのは初めてだ。キスマイを通してKAT-TUNを見ることはあっても、KAT-TUNを通してキスマイを見るなんてことはなかった。想像もしたことがなかった。私はキスマイを悪く言っていいという風潮は見方が偏っていて好きではないが、KAT-TUNはキスマイよりプロ意識の認識について上回っていると思ってた。キスマイにはプロ意識よりも感情で歌うという表現があり、そのエモさも魅力のひとつであるが、仕事としてをアイドルやってる以上、本来であればKAT-TUNの姿勢のほうが正しいとも思ってきた。ここまで生々しく本物の感情で歌うKAT-TUNは、きっと初めて見た。
 
3人の態度は動揺が強すぎる。事務所は生放送での発表を許した。双方合意したとも書いている。テレビ局には注目度が上がるというメリットがある。だが3人のコメントでは、「悔しい」「引き止めた」「分かり合えない」と、全く円満な様子がない。事務所とは全く違う態度だ。今回は赤西くんや聖くんの時とは全然違う。会社とは話がついているのに、メンバーとは完全に決裂してしまったような雰囲気さえある。今までは問題児を切り捨てた、という印象だったが、今回は違う。あんなに決然とされてしまったら、切り捨てられたのはKAT-TUNのほうになってしまう。こんなに感情的に動揺する亀梨くんを見たのは初めてかもしれない。しっかりカメラの前に立っていながら、ここまで動揺している姿は。
キスマイでは、こういう感じはちょくちょくある。筋がわからないのか、わかっても感情が追い付かないのか、カメラの前で動揺する。大人としては少々情けないが、私はこの生々しさが結構好きだ。みんな腹に一物抱えながら笑っているような、必死に「仲良し」をやろうと奮闘しているような。そのメッキがはがれかけて、仕事を一旦放棄してでも修復しようと奔走するような。キスマイのそんな姿を、くだらないと看過したり幻滅したり出来ないのは、ほかでもないKAT-TUNのことがあるからだ。

キスマイの馴れ合いは激しい。公私混同も甚だしい。例を挙げれば枚挙にいとまがない。そんなにして息苦しくないのかというほど自ら相互監視と束縛をして、しかも嘘や誤魔化しを許さない。そこに嘘が介在すると、横尾くんのように謝罪して、禊ぎとしてメンバーに人生を捧げなければならないらしい。(自らそう語った1万字インタビューは批判されまくった上に、単行本として出版までされてしまうプレイである。多かれ少なかれ自分を悪く言ったに違いないだろうに、真実になってしまったのはそこそこ酷い仕打ちだと思う。自業自得だけどファンとしては心配な部分でもあった。)
そんな風にする理由は、きっとKAT-TUNの人数が減っていく理由と同じなんじゃないかと思う。なんなのかはわからない。そこがジャニーズの深い闇であって、グループというものが一筋縄では理解できない存在である所以だと思う。だからこそ、ジャニーズは面白い。そこが知りたくてもっともっとアイドルを見てしまう。商品のすぐ傍らにある闇が見たくて、ついついまた買ってしまう。
結局彼らは似ているのだ。そしてそれを別々の方法で、なんとか繋ぎ止め維持しようと必死なのだ。
 
話が逸れてしまったが、初めてKAT-TUNと亀梨くんにキスマイを見た記念にこれを書いた。藤北ってこういうことか…と、Dead or Aliveをリピートしながら思う。今までのKAT-TUNのあらゆるパフォーマンスの中で、これが一番心が震えた。藤北にいつも感じる、わけのわからない感覚に襲われた。
期限付きの4人のKAT-TUN。展望の全く不明な3人のKAT-TUN。私はいま、KAT-TUNのFCに入ろうか葛藤している。もちろん、「藤北感のある亀梨くん」を見るためではない。彼らがKAT-TUNのパフォーマンスを取り戻すプロセスに期待しているのだ。

職業・アイドルの「大人として」の責任

※田口くんについての話ですが、彼の脱退理由・動機について考えるものではありません。田口くんの態度について評価するものです。

 

現在、田口くんについて批判や混乱の言葉がネットに溢れている。彼の発表を、単なる転職として捉えられなかった人はとても多い(それも感情的には理解できるし、責められない)。だが事実、彼は問題を起こしたわけではない。理由がなんであれ、まごうことなき転職である。

ゴールデンの生放送で、残るメンバーではなく辞める田口くん本人の口から発表することができたことは、これを裏付けている。辞める人間なのだから、本番でとんでもない問題発言をしてもおかしくない。生放送では編集もできない。辞める田口くんがそれほどまで信頼されているということが、まず私の見てきたジャニーズで初めてのことだ。恐らく多くの人がそうだと思う。

皮肉なことだが、これだけの話題性を今のKAT-TUNで生み出す事態はほかに無いだろう。現に最新DVD「9uarter」はこの発表以来、再び売上ランキングに浮上してきた。彼は事務所との折り合いの中で、このタイミングでの発表を選んだ。選んだというよりも、事務所の提案に合意したというのが実際のところだと思う。この時点で、田口くんが事務所との関係に何の問題もなく「転職」するのだと理解できる。

 

亀梨くんはきっとファンや周囲の人への責任感から、何度も謝罪を口にした。だが田口くんが謝罪したのはメンバーに対してだけだった。この態度が批判を受けているが、では田口くんに問題があったかというと、そうではない。心情的に亀梨くんはじめメンバー3人に同調してしまう気持ちはわかるが、彼が迷惑をかけたのは、本当にメンバーだけだ。事務所がどんな判断なのかはまだわからないが、彼の転職を許している。転職が迷惑なら、事務所が彼を引き止めて許さないだろう。

 昨日更新された田口くんのブログも、非常に整った、筋の通った話だった。ベスアで言った内容に、今後の展望を不透明にしかできないことが申し訳ない、という部分が加わっていた。メンバーの発言から、少なくとも半年以上の検討の末に転職を決めたのだから、転職先にアタリぐらいはつけているだろう。しかし春まではジャニーズという会社の人間であり、他社で働くことを詳細に話せないというのも納得できる。(まだ憶測でしかないが、私はこの部分を見て、田口くんがソロで音楽または芸能活動をする可能性は高いのではないかと思っている。)

 

田口くんは、KAT-TUNを応援してね、でも、俺の新しい人生を応援してね、でもなく、「3人のKAT-TUNをよろしくね」と言った。 

社会人として果たすべきは、給料分の仕事に責任を持つことと、雇い主や組織に不義理をしないこと。辞めるとなった今でも、春まではKAT-TUNを勤め上げ、事務所の利益を損なう発言はしない。脱退時期は番組に迷惑をかけない時期を選ぶという。何の問題もないどころか、15年務めたKAT-TUNという仕事を終えるにあたって、しっかりと責任を果たしている。

ベスアの時、彼は心中穏やかで笑っていたわけではないと思う。けど笑って、震えながら話す亀梨くんを、神妙な顔で俯いている上田くんと中丸くんを、見守っているように見えた。きっと彼のなかで、KAT-TUNへの情は全然切れていない。

脱退の理由は現時点ではまったくわからない。だが、事務所とこれほどきちんと話をつけ、筋の通ったコメントを書き、生放送でしっかりと発表することが出来る彼が、決断した。私はこれまでの田口くんの言動を隅から隅まで見ていたわけではない。この顛末だけを切り取って見ても、脱退するという決断を実行するにあたり、これ以上ないほど立派な対応だと思う。

10年以上KAT-TUNを見てきて、こんなに田口くんを中心に見たのは初めてだ。田口くんの肝の据わった笑顔と、完璧にKAT-TUNを魅せるパフォーマンスは、最高にカッコいいアイドルだった。こんな人がいるのに今まで気が付かなかったのかと、少しだけ後悔させられた。

 

だからと言って、KAT-TUNを失うかもしれないという不安とか、田口くんが見られなくなってしまうかもしれない不安が消えるわけではない。彼が社会人として立派か立派じゃないかなんてどうでもいい、というのがファンの本音かもしれない。どうしてもKAT-TUNを離れることが許せないかもしれない。

けれど、円満に転職する田口くんが、社会人としてなっていないと非難されることだけはなんだか腑に落ちなかった。私は例え結婚が理由だったとしても、転職先がろくに定まっていなかったとしても、ここまで事務所と話をつけ、穏便に事を運んだことが立派だと思う。

私はむしろ興味が沸いた。ただ単にひょろ細くてKAT-TUNの端でスベリ散らかしていた彼が、知らぬ間にこんなに立派な大人に成長していたのかと。KAT-TUNにとってもこのことは転機になり得る。事務所が許したのは伊達ではないのではないかと思っている。彼らがどんな運命を辿るのか、どっちに転んでも見届けたいと思った。

 

(いきなり7000字を超えてしまって吃驚してる。自担のことでもこんなに書けないんじゃなかろうか。)