この愛を欺けるの

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SMAPって耐えられないほど切ない曲あるよね15選

国民的と呼ばれて、その人気も安定期に入ったかのように思えたが、ここ数年また更に若年層のファンを増やしているSMAP。彼らの音楽活動については、活動期間が長いだけあり、一貫性を見出すのが難しい。だが、かなり初期の頃からSMAPに時折現れる系統が存在する。それが「耐えられないほど切ない曲」だ。

アイドルにはあまり専門性の高い音楽は求められないため、キャッチーで分かりやすい音楽が多い。バラードでも単なる甘いラブソング、SMAPで言うと「らいおんハート」のようにただ単に女性への(多くはファンを暗喩した仮想的な)想いを歌うものが主となりがちだ。しかしSMAPには、通常アイドルが歌うには重すぎるくらいの切ない・悲しいバラードがある。

この路線において決定的だったのは、2001年にリリースされた「pamS(ウラスマ)」である。それまでもアイドルにしては失恋の歌詞が多い傾向にはあったが、メンバーが若かったこともありポップな曲調が多かった。それをこのベストアルバムではバラードアレンジして再収録したのだ。以降、定期的にうら寂しい、千切れるような切ない曲が歌われるようになったような印象がある。

ここではそうした、SMAPのアイドルらしからぬ切な系バラード楽曲を15曲挙げてみようと思う。なんで15曲?キリ悪くない?と思うかもしれないが最初10曲にしようと思ったが収まらなかった。一応初収録年代順に並べてはいるものの、特に90年代の曲は遡って聴いているため間違いなどあるかも。

 

1.雪が降ってきた(1992年雪が降ってきた/2001年ウラスマ)

「あんなに恋した君の笑顔忘れない」

昨年のFNS歌謡祭でウラスマ版が歌われたのが記憶に新しい。こちらもシングルカットされたバージョンはポップな童謡のように歌っているが、これは歌詞の内容からして本当にウラスマ版が正解だと思う。中居くんのパートにある高音がとても切ない。清らかなクリスマスを連想させるサウンドの中で、静かに昂る喪失の悲しみが伝わってくるような曲。

 

2.泣きたい気持ち(1993年SMAP 004/1994年HeyHeyおおきに毎度あり/2001年ウラスマ)

「泣きたい気持ちだよ 二度とかえれない」

特に二番のサビが圧倒的に切ない。千切れるような想いを歌っているに違いないのに、オリジナルバージョンだと曲調がポップで、メンバーがまだ子どもの声なのもあり軽めの曲に仕上がっているが、ウラスマ版でヘビーな失恋バラードへと進化した。おそらく原曲は初恋の終わりを歌っているのだと思う。旋律として哀愁を誘うようなものではないのに、これを聴くと泣きそうになる。元は中居くんのソロ曲だった曲であり、中居くんの声質が一番合っていると思う。

 

 3.悲しくて眠れない(1993年SMAP 003)

「めぐり会えるね 次の未来きっと」

これも中居くんのソロ曲。こちらはカバー等されていない。そもそもアイドルの曲でタイトルが「悲しくて眠れない」って有り得るのだろうか。すごい。これはもはやバラードと呼んでいいのかわからないぐらいヘビーな曲で、旋律も歌詞もこれ以上ないほどの悲しみに満ちている。Bメロ終わりからサビにかけて、一気に展開していく感じが好き。歌詞は中居くんの若い頃の実体験に基づいているという。切ない。

  

4.恋の形(1998年たいせつ/2001年ウラスマ)

「別れもひとつの恋の形だね 同じ想い出を2人は愛する」

残念ながら手元に音源がなく原曲を聴くことが出来ていないのだが、ウラスマ収録版のあまりの切なさに、これがアイドルの歌う歌かと幼心にも圧倒されたのをよく覚えている。切ない旋律が、気温の高い、燃えるように赤い夕焼けを彷彿とさせる。歌詞からして明らかに別れてしまった後の歌なのだが、何も変わることなく愛し合っていることがわかる。もどかしい恋の痛みを歌うSMAPの切なくも美しいこと。

 

5.言えばよかった(1998年SMAP 012 VIVA AMIGOS!)

「知らなかった 君にもう会えないなんて」

好きな人が引っ越してしまって離れてしまう歌。そんなに重い曲調にはなっていないのだけれど、90年代の独特な軽めのサウンドと、繰り返される「言えなかった」「言えばよかった」という後悔の言葉に、何とも言えない悲しみが漂う。冒頭のラップなんかは結構明るい感じで入るのに、聴き終えるとどこか寂しさが残るような曲。

 

6.オレンジ(2000年らいおんハート)

→7.Song2 〜the sequel to that〜 (2002年freebird)

→8.夏日憂歌 (2003年MIJ)

「人混みの中でいつの日か偶然に 出会えることがあるのなら」

「いま1人歩き出す 君になにが出来るだろう」

「憧れ泣いたあの夢は 誰が手に入れたのだろう」

この3曲は作詞作曲が同じ人で、ファンの間では三部作と言われている(これが公式情報かは確認できなかった。)。オレンジはあまりにも有名な良曲である。Song 2は明らかにオレンジと同じ世界観とわかるし、爽やかな若い恋のもどかしい結末を歌う、潔さと未練とが綯交ぜになったような雰囲気も共通している。特筆したいのは夏日憂歌だ。翌年のアルバムに収録されているのだが、テイストが打って変わって、オレンジからかなり年月が経っていると思われる。主人公はもう結婚していて、それでいて、色褪せた古い思い出をアルバムを捲るように回想するような歌。「誰しもが皆時代を恨むのだろう」という歌詞から、若い2人の別れの理由も気になってくる。とにかくこの3部作は考察の余地も多く、またどれもSMAPらしい楽曲であることからファンの人気も高い。

 

9.僕は君を連れてゆく(2003年世界に一つだけの花)

「君に恋をした瞬間の僕を忘れない」

歌詞ではっきりと〝恋〟と言っているのに、私はこの曲がどうも単純な恋愛の歌に思えない。「僕たちの望むすべて あてどもなく遠いけれど」、「僕は君を連れていく」という関係は、恋愛というよりもむしろ、あるかどうかもわからない成功を目指して共に戦うグループのメンバーみたいだなあとか思っている。

という妄想はさておき、歌詞には「連れて行く」という一方的な関係性が各所に散りばめられている。単なる恋愛ではなく、何か事情があって対等な関係でいられなかったことを暗示しているように思える。「望遠鏡から覗く星のよう」な恋が、叶ったと言えるのかぜんぜんわからない。今は切なさや涙や重みだけがあって、それでも「君を連れて行く」という壮大な決意の歌である。

 

10.It's a wonderful world(2005年SAMPLE BANG)

「あなただけをずっと愛したい」

ここに挙げた中では珍しく、恋が実っている曲である。SMAP楽曲の中で最もど真ん中のバラード。特に木村くんはこういうラブソングが本当に似合う。優しく且つ壮大なサウンドで、神聖さすら感じさせる旋律で至上の愛を歌い上げる。コンサートでの感動が大きかった曲だ。会場中に5人の静かで優しい、しかし力強く愛を伝える歌声が響き渡り、とてもロマンチックな空間だった。これはむしろ、アイドル色の薄いSMAPの中ではどアイドルな楽曲かもしれないが、薄っぺらいラブソングとは比にならない荘厳さがあった。

 

11.Dawn(2005年SAMPLE BANG)

「もう一度巡り会えたら その時は笑顔見せて」

これは恋の歌ではない。では何がテーマなのかと聞かれると具体的なことは歌詞からははっきりわからないのだが、どこか世界平和のようなイメージが連想される。終末を感じさせるフレーズと、それをも受け入れすべてを許し合うという普遍的なメッセージの上に、悲しみと憂いを含んだ切ない旋律が絡み合っている。最終戦争の後のような、すべてを失った人々の歌のように聴こえる。

 

12.星空の下で(2006・Pop Up! SMAP)

「いつの日か年取って 無邪気に笑えたら」

かなり具体的な歌詞があり、少々情けない男の歌である。SMAPには意外に少々情けない男の歌も多いのだが、これはなんだか悲哀がある。後悔や喪失感の深さが伝わってくる。これは男性の支持を地味に得ているんじゃないかと勝手に想像している。コンサートの演出がロマンチックでとてもよかった。5人で切り株のようなイスに座って、星空の下でそれぞれが過去に想いを馳せているようで、幻想的な雰囲気があった。妙に頭に残るフレーズがいくつもある曲だ。

 

13.ひなげし(2010年We are SMAP!)

「もし僕がこのまま 眠りの中に閉じ込められたら」

歌詞からはあらゆる解釈の余地がある楽曲だと思う。恋愛にも結婚した夫婦にも思えるし、別れのような雰囲気も少しあり、友情や別の関係にも置き換えられる。具体性は無いが、「金色の涙」「ひなげし花言葉」という暗喩がどこか温かい、静謐なイメージを連想させる。曲調は静かだがそこまで暗い雰囲気もない。穏やかな情景が浮かぶような、それでいて薄っすらと切なさのある楽曲。今、もしくは5年・10年後のSMAPに歌ってほしい曲だ。

 

14.僕の半分(2011年僕の半分)

「振り向いて ここへおいで 美しい人」

ここまで黒鍵の音(何と言ったらいいかわからないけど♯や♭のつく音、この曲はたぶん♭)の効いた暗いイメージのバラードを、アイドルがシングルカットするというのがすごい。斉藤和義さん節バリバリである。はっきりと言わないが別れてしまった、あるいは何かで離ればなれになってしまっている人への未練の歌。しかし想いがまだまったく終わっていない様子である。恐ろしさすら感じるほど美しい言葉と音によって、切実な想いが表現されている。なんとなくKinKi Kidsっぽい雰囲気の歌。

 

15.好きよ(2014年Mr.S)

「手を伸ばした瞬間また 届かなくなって」

いわゆるゲスの人が書いた曲なので、これに触れることについては色々あるかとは思うけど好きな曲なので挙げておく。全編に渡りメンバー1人ずつの長いソロパートで構成されていて、5人で歌う箇所はないという変わった歌。独特な旋律にメンバーが柔らかく音を乗せていくような優しい曲。しかし歌詞を見ると、まるで死別した恋人への想いを歌っているようにも思える。40代のSMAPの最も切ない曲である。

 

タレントとしての活動が安定しすぎているため見過ごされがちだが、「音楽としてのSMAP」も幅広くとても面白いので、バラード好きな方なんかはぜひ聴いてみてほしい。SMAPの根底にある悲哀を見つけるとき、そこにこそアイドル性が宿っているように思えるのだ。SMAPはグループとしての経緯・変遷が特殊なので、ジャニーズ音楽との相違や共通を見つけるのも楽しいところ。