この愛を欺けるの

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Kis-My-Ft2 Concert Tour2016発表に際して・キスマイコンについて考える

2016年のコンサート日程が発表された。7月~8月という夏休み期間、4都市11公演のドームツアーだ。真夏の土日をフルに割り当てられたなんとも好待遇な日程である。これだけ早い時期の公演なら追加公演や年内の映像化も有り得るし、あるいは舞祭組のアルバム・ツアー等のイベントが秋以降にある可能性も期待できる。

去年までキスマイは料金先払いだったのだが、今年からメール申込み・後払い・メールで当落確認となった。先払い制には転売防止の意味もあったと思うのだが、それを捨てても後払い制に移行するのには、最大限倍率を上げて潜在的な動員可能数を測りたい意図があるのではないだろうか。ひいては近い将来の札幌ドーム公演を狙っているようにも思える。

またこちらとしては、当落発表がメール配信になったのは非常に有り難い。発表期間に入っているのに、回線パンクで一週間以上当落の確認ができないのが常だった。

 

以前、私はこういう記事を書いた。

ayayaya-kis.hatenablog.com

この記事を書いた当時、私はキスマイをまだ「ジャニーズ」の枠組みの中で考えていた。しかし「2015KIS-MY-WORLD」DVDが発売されて繰り返し見るうちに、その考えが少しずつ変わってきた。

キスマイのコンサートは、2014年からセルフプロデュースとなった。それ以前とそれ以後では、明らかに構成センスが変わった。2014年のKis-My-Journeyには「Kis-My-Landのブラッシュアップ版」という趣旨もあったためわかりにくかったが、この2015年KIS-MY-WORLDを見て、はっきりと、従来のエイベックス主導のコンサートとは趣向を変えていることが見て取れた。

2014年以降、キスマイのコンサートは急速に「脱ジャニーズ化」しているのかもしれない。

 

ジャニーズのコンサートにおいて、フライングや照明・特効・舞台装置は、演出の重要な部分として位置付けられている。そしてそれは派手で豪華であればあるほどよく、豪勢な演出を使いこなすグループほどよりアイドル性が高いとされる。東京ドーム以上の広い会場では、大掛かりな演出によってその広さを埋めることが良いコンサートとされてきた。

2014年以降、キスマイのコンサートはどうだろうか?以前は大型LEDパネルや巨大な船のセットなど、大がかりな舞台装置も使用していたが、2014・2015年のコンサートではそうした巨大な装置は消えていた。凝った照明演出もあまり登場しない。特効は使いどころを1曲に限定して、そこで乱発するという演出になっていた。

これは確かに、従来のジャニーズに多い豪華絢爛な演出のコンサートに慣れた人たちにとっては物足りないのだろう。もっと壮大な演出効果を駆使して、それを背負ってなお輝くことこそがアイドル性だと考える人にしてみれば、「背負うものが足りない」と感じるのもやむを得ないかもしれない。

 

では、キスマイはなぜこうした簡素な演出に切り替えたのだろうか?ジャニーズのコンサートに慣れた人にとっては物足りないはずの簡素な演出でコンサートを行うことには、一体どういう狙いがあるのだろうか。

正確な数を調べることはできないが、キスマイのファンには以前から他のグループのファンだった人と同じかそれ以上に、キスマイで初めてジャニーズを知った人が多く存在する。その人たちにとっては他のジャニーズのコンサートは未知のもの、あるいは別の世界のものであり、キスマイのコンサートがそれらと比べてどうではるかは恐らく何の関係もない。

キスマイのコンサートには一定数の男性客が来ている。私の肌感覚でしかないが、ジャニーズのグループとしては男性客の割合がとても多いほうであると思う。また、ちょうど2014年頃から、小さい子どもや夫を連れた家族連れ、SMAPとの共演によって流入したと思しき中年層の女性、連れ立って来る中学生くらいの男女の集団と、客層が多様化したように感じた。これほど雑多に多様な客層を抱えたコンサートは若手ではまずないし、嵐以下のグループで考えてもキスマイくらいではないかと思う。

客層の多様化はつまり、いわゆるジャニオタの割合が相対的に減っていることを意味する。以前に書いたこちらの記事でも触れたが、キスマイにはただでさえ「事務所担」と呼ばれるジャニーズフリークのファンが少ないように思う。

ayayaya-kis.hatenablog.com

多様化したキスマイのファンたち――ジャニオタではない、ジャニーズの文化やセオリーを知らないファンたちにとって、「コンサート」として知っているのは一般のアーティストのコンサートになる。そういう人たちにとって、現在のキスマイのコンサートはジャニーズらしくないからこそ、ジャニーズを知らない人にも馴染みやすいものなのではないだろうか。それが更にコンサート客層の多様化を促し、一般層への敷居を下げる効果を持っているのではないだろうか。

 

私はこの1月、Superflyのコンサートを聴きに行った。友人に誘われて初めて行ったのだが、パワフルな歌声を存分に楽しめて、またアーティストのコンサートにしては視覚的な演出にも凝っていたように思った。ステージの移動、照明色の変化、落下物もあったし、衣装の変化も素敵だった。その際に一番強く感じたのは、アーティストであるSuperflyのコンサートを、キスマイのコンサートと同じように見ることが出来たということだ。

キスマイのコンサートを見るとき、豪華絢爛な演出がなくとも、彼らの歌声に耳を澄まして、藤ヶ谷くんと北山くんのハーモニーを楽しむことができる。白い照明に自担である横尾くんが照らし出される光景は、息を飲むほど美しい。セットリストに好きな楽曲があれば嬉しくなり、彼らの力強いダンスに目を奪われる。息つく間もなく次々に披露される楽曲たちを、思う存分楽しんでいる。それはまるでアーティストのコンサートを見るように。

おそらく、ジャニーズを初めて見るファンにも、キスマイのコンサートはほぼ違和感なく受け入れられるのではないかと思う。強いて言えば、観客の参加するC&Rだけは、何の説明もなく慣習によって行われるため、初見のファンには何が起こったのかわからないかもしれない。だがこれも、コンサートの度にメンバーの誰かが曲の前半でレスポンスを自ら言い、新たなファンにも浸透させようとしているように思う。

2014年以降に一般層のファンが増加したことは、舞祭組での活動の結果でもあると思う。後列の人気獲得にあたっては、新たな一般層を取り込むという方法を選んだ結果が舞祭組というユニット活動なのだろう。2014年からドームツアーを敢行できたことも、そうした狙いの成果であると言える。そう考えれば、2014年のコンサートから、一般層を主な客層に据えた構成にシフトするのは自然な流れなのかもしれない。

こうした「コンサートの脱ジャニーズ化」が、セルフプロデュースになったことに伴って起こったのか、客層の変化に伴う戦略なのかはわからない。だが結果としてこうした変更を行ったことは、戦略として非常に有効であると思う。「ジャニーズのコンサートって、特殊でしょ?」と偏見を持つ人にも、キスマイのコンサートは行きやすい。非常におすすめできる。

 

「キスマイのコンサートがつまらない」という人が居る。ジャニーズなのだから、ジャニーズらしいコンサートをしてほしいのかもしれない。デビュー前の楽曲を求めているのかもしれない。もっと鬼気迫る追い込まれたパフォーマンスが見たいのかもしれない。「どの席から見ても同じように楽しめるコンサート」という観点から構成してほしいという人もいるらしい。

現段階で考えれば、残念ながら、そういった人はキスマイとセンスが合わないので、観るのをやめたほうがいいとしか言えない。現状を受け入れられないのであれば、いつまでも無いものを求めていても仕方ないと思う。コンサートにおいて何を重視するかは人によって違うのだから、そのセンスの合うグループだけを追ったほうがいい。それが普通だ。

…でも私は、キスマイに限っては、更に大きなどんでん返しがあるような気がしてならない。このまま「脱ジャニーズ化」が進んでいくなんて、そんな順当な予想ではまったく足りない。

 

今年のコンサートは何かが違う。

なぜ、先にツアー日程を発表するのだろう?なぜ夏休みの土日を割り当てたのだろう?なぜ急に後払いに変更するのだろう?シングル曲に今さらグループ名が入っている意図は?

デビュー5周年。彼らは一体何を仕掛けてくるのだろう。それがどんな意味を持って、どんな結果を生むのだろう。

良くも悪くも、彼らは普通じゃない。共感できない話や部分もたくさんあるし、常軌を逸していると感じることさえある。完全には感情移入出来なかったり、状況が掴めないこともある。私は彼らを初めて見たとき、このグループはまったく売れないだろうと思った。それが予想を大きく裏切って、彼らはドームツアーを行うグループにまでなった。

次々に想定外のことが起きるリアルタイム・ドキュメントの面白さ、それがキスマイだと思う。彼らについて予測を立ててもほとんど意味を成さない。裏をかかれたように悔しくなったり、清々しく裏切られてスカッとしたりする。

 

はっきり言えば、キスマイを面白いと思わないなら見なければいいと思う。わざわざ見て不満を言う感情はまったく理解できないし、ファンからすると、そういう人を見ることはとても不愉快だ。普通に考えれば、そういう人のことは切り捨てるしかないだろう。

けどキスマイだからこそ、そうではない結論があるのかもしれないと思えてくる。

こんなに目が離せなくて、次が気になって仕方ないアイドルは初めてだ。誰だって自担に一番興味があるけれど、私はやっぱりキスマイが一番面白いアイドルで、観測し甲斐があると思う。こんな大層な予想をしたのに、全然なんでもなくて思い切り肩透かしを食らうかもしれない。普通の感性でなんかまったく予想出来ないのだから。

今年のコンサートは、どうしても初日が見たい。その裏切りも感動も、生でリアルタイムに体感したい。彼らが提供してくる意外性だらけのドキュメンタリー、その暴力的なエンターテインメントに頭まで浸かりたいのだ。

とりあえずは、アルバムが本当に発売されるのか、または何らかの趣向を変えたツアーとなるのか、「脱ジャニーズ化」が続くのかどうか、というあたりが気になる。あと、野球大会のスペシャルゲストに誰が来るのか。横尾くんがわざわざラジオで知らないと言うあたり怪しいのである。