今さら2015KIS-MY-WORLDをレビューする
キスマイの歴代シングル売上・アルバム売上で、どちらも1位タイトルが1年以内に発売されている状況のなか、2015KIS-MY-WORLDは幕を開けた。リリースがデビュー以降最も昇り調子のなか敢行されたドームツアーとあって、期待値はこれまでになく高かった。
全体の感想として完成されたコンサートだった。構成もよく考えられていたし、何よりデビュー5年目にして、3時間飽きさせないコンサートをするのは立派なことだろう。
というわけで今さらだが、2015KIS-MY-WORLDをセトリ中心にレビューしてみる。尚DVD発売前なので、うろ覚えな箇所や間違いもあるかも。
0.Opening
いきなり仮面を付けたJr.がステージ上に出てきて、コンサートの世界観を案内人として説明するという導入。客電が点いたままの明るい会場に、前触れもなくいきなりドラムロールが流れたのには驚いた。軽い客イジリで、ちびっ子と中年男性をスクリーンに映す演出があったが、これは広い客層を獲得しているというアピールを入れることで、DVDを見たライト層へ向けてコンサートのハードルを低くする狙いだと思われる。今回のコンサートはこれまで以上にこうした細部に戦略的な意図が見られる傾向にあった。また意図したものではないだろうが、最初にここでペンライトを使った煽りで客の一体感を演出したことが、コンサート中盤でのペンライト芸に繋がったのではないかと思う。
1.4th Overture
今回ジャンクションはあまり凝っておらず、映像を少し加工しただけのシンプルな作りだった。設定の「鏡の中の世界」とのリンクはあまり感じられないが、ファンタジーという意味で森の中なのだろう。メンバーの顔が綺麗に撮れていたので満足。
2.Brand New Wolrd
Overtureからアルバムリード曲は予想通りだが、のっけからフライングで7色のメンバーが飛ぶ演出にはアガる。一曲かけて上下前後に移動しながらメンステまで飛んで行くので新鮮味があった。
3.Kiss魂
Kiss魂は二階堂くんが本来のキスマイらしい曲、と言うだけあってやはり盛り上がる。リリースから数か月経っているが実はコンサート初披露であり、この曲を序盤の起爆剤に持ってくるのは効果的だった。フォーメーションダンスが特徴の曲なので、メンステでしっかり見せてくれたのも嬉しい。
最新曲からデビュー曲へ繋ぐ配置。ローラーに履き替え外周を回ったのでお手振り曲としても機能。歌い慣れているだけにその日のメンバーのテンションが如実に感じられる曲。
5.運命Girl
運命Girlのキスマイトレインを鮮やかなメンバーカラー衣装でやると、七色が綺麗に連なって見えるのでお得感があった。Kiss魂~エビバデで盛り上がった状態の観客に向かって「俺が好きでしょ?」と投げかけてくるのが、コンサートに来たという多幸感を煽るようでドラマチックだ。
(ソロダンス)
ここでジャンクションとフロントのソロダンスを経て衣装替え。衣装が鮮やかな7色からガラリと白黒に変わり、ソロダンス中の映像も鏡(ガラス?)を打ち壊していく演出。盛り上がり重視だった序盤から、ここで場面転換することがわかる。
6.FOLLOW
ロック系ダンス曲で、振りに腹チラが入っているようにセクシー曲でもある。特にAメロの二階堂くんの声がハスキーで非常に色っぽい。半音が多く哀愁があって、序盤に比べぐっと大人っぽくなった印象を与える。歌詞には「光」というキーワードが散りばめられており、駆け落ちのような悲恋めいた雰囲気。
7.Luv sick
FOLLOWに続くべきシングル曲は他には考えられない。FOLLOWは報われない世界(愛の構造的欠陥)、Luv sickはそれに立ち向かい打ち壊すようなイメージだろうか。メンバーが花道を練り歩く曲として単純にカッコいい。
8.Another Future
この流れでくると曲名がパラレル的な雰囲気を醸し出す。前途多難な恋の末路はFOLLOWで既に示されており、Luv sickで開いた第六感によって別の未来を探すのかもしれない。この特徴的なダンスは毎回感動させられるので、センステできちんと見せてくれて良かった。
9.if
寄り添って歩けたなら、とそっと願っているだけの淡い物語。同じ「報われぬ想い」でもFOLLOWとは全く違う世界観。FOLLOWで触れれば熱を感じた鋭い光は、マイクスタンドを青く光らせて淡い恋を歌っている。狙った効果かわからないが、ifがFOLLOWの「アナザー」ソングとして機能したことには感動を覚える。
10.君にあえるから
光は街にそっと灯る明かりとなり、待ち合わせをする2人を照らしている。舞い降りた真冬の奇跡によってifの2人は結ばれたようだ。FOLLOWの時にはもっとストリート風の衣装が似合うと思ったが、こちらのストーリーにも繋がるようにカジュアルなモノトーンなのかもしれない。藤ヶ谷くんの声は本当にこういう優しいラブソングが合う。(ところで、この曲の藤ヶ谷くんのソロパートで横尾くんが全力で口パクして周囲をザワつかせていたらしい。このブロックの結末部分だというのにうちの子は一体なにをしているのかそんなところもかわいい。)
11.Be Love
物語はここまでで、ここからはキスマイの世界に戻ってくる。とてもジャニーズらしいシンメ曲で、7人の時のようにダンスをガッチリ揃えていないので、ある意味キスマイっぽくない。男性役である宮田くんをカッコよく見せることに重点が置かれ、玉森くんがしっかり女性役を演じていた。おかげでとても綺麗なカップルに見えて、BLというアングラ感はあまり無い。
12.わんダフォー
BLよりこっちのほうがキワモノである。曲を聴いた段階でカワイイで行くのか全力でふざけるかの二択だとは思っていたが、着ぐるみの色にピンクを選んだ時点で完全におふざけだ。横尾担としては少し残念ではあるが、28歳と29歳の男が本気のカワイイを狙う方がヤバいという判断だろう。そしてまさかのフライング。たいぴちゃん♀に合わせてだいぶ無理めな着ぐるみでわんわん空を飛ぶ自担かわいい。バクステに来てからJr.の子(シャルフくん?)に絡んでいた横尾くんが本当にかわいかった。Jr.の子のわんダフォーTシャツに茶色の犬耳のほうがよっぽどかわいかったのでそっちでやってほしかった気もする。
13.Shake body
盛り上がり曲に回帰してきた。デニム生地の水色と白のパッチワークのような衣装。7人が外周の立ち位置に着くころにはペンライトが近くの人の色になるという観客発信の演出が完成していた。会場が7色に染まる様は圧巻で、これが制御された演出でないことがまたキスマイワールドだなと思う。
14.SHE!HER!HER!
これまた序盤に戻ってきたような雰囲気だが、間でストーリーを挟んだおかげで新鮮味がある。なんとなくこの曲はメンバーカラーでやってほしい(去年のイメージかも)気がするが、デニム生地もスッキリしてて良かったかも。
15.キスウマイ
相変わらずキスマイポールがカワイイ。華やかでキャッチ―なのにカッコいい、というキスマイらしい楽曲で実はシングルの中でもすごく好きな曲。
16.LUCKY SEVEN
ハイテンションな曲ではあるが企画モノなのでもうやらないと思ってた。改めて聞くと本当に良い曲。キャッチ―・明るい・カッコいいという王道キスマイ楽曲だが、これを使うか!という意外性もあってとても良い。
17.Summer lover
これもやると思わなかった。夏らしくてカッコいい曲。アソトロに移動してメンバーが水鉄砲で客に水をかけるという演出は、単純に盛り上がるし実はちょっと色っぽくもあり、なんだかこの曲にぴったりで感心した。
(MC)
18.棚からぼたもち
19.てぃーてぃーてぃーてれっててれてぃてぃてぃ
舞祭組はさすがにかなりショートバージョンだった。仕方ないけど師匠パートカットは寂しい!3曲もあるからしょうがないけど…!(オーラスでは大サビあったらしい。DVDに期待。)
20.アゲてくぜ
前回のアルバム曲。アルバム曲復活当選があるってすごく良いことだと思う。フロントが白っぽいシャツとパンツで出てきて、舞祭組はジャケット脱いだだけのようだった。外周お手振り曲。
(下げてくぜ:リンボーゲーム)
(大喜利)
「キスマイフェアリー」と称して、妖精(幼稚園のスモッグにしか見えなかった)の格好で大喜利。これがとにかくかわいい。ジャンクションもかわいい。
21.ドキドキでYYYEEEAAAHHH!!!
フェアリーのかわいさにやられてたら、そのまま曲に入って妖精たちが花道に!この曲はCD聞いた時からコンサートで絶対かわいいと思ってた。センステで盆踊り?みたいなダンスしたり、3時間のうち最高潮にかわいかった。
(フェアリージャンクション・着替え)
22.Kis-My-Venus
スクリーンが割れてバンク=キスマイランドが登場。この演出だけは結構お金かけたと思う。銀ギラギンの衣装。ローラーの上手さをここぞとばかり見せつける。ここからは再びカッコいいブロックに入る。
23.Halley
ローラーであちこちに移動しながら歌うアルバム曲。これはキャッチ―・ポップ要素が強め。外周を回ってお手振りする。ビーナスで完全に会場が温まっており、回る時間も長いのでこのお手振りは距離が近い感じがした。
24.WANNA BEEEE!!!
どこに入れてもテッパンで盛り上がるこの曲が後半とは。それほど良曲が増えたのだと思うと感動する。ここでも外周を回ったり花道を走ったり、ローラーで自由に動き回るので見ていて気持ちいい。次の曲のために二階堂くん千賀くんがいつの間にかハケていた。
25.Double Up
ニカ千曲。赤青の衣装で対比するなど「FIRE!!のオマージュ」感が強いので、歌とラップでパート分けするのは良い手だったかも。やんちゃというより洗練されたオシャレさのほうが際立っていて、FIRE!!ほどキスマイっぽくはない。ニカ千らしいというより、舞祭組との差別化を図った曲のような気がする。
26.証
藤北がギター一本ずつ弾き語る、アーティスト風の曲。藤北はパフォーマンスにおいてはキスマイそのもの言っても過言ではないので、むしろこれはキスマイでは難しい楽曲で良かったと思う。ニカ千と比べると落ち着いた風格が際立つ。
27.FIRE!!
去年のアルバム曲で、あまつさえこれを意識したであろうニカ千曲があるのに、もう一度セトリに入れてくるのには意表を突かれた。去年と違うのは衣装の色が揃っていることと、最初からセンステで2人が近くにいる状態で始まるので、しっかりシンメダンスを見られたことだ。去年は双璧という感じで離れている印象のほうが強かったが、今年は心理的に支え合うような部分が垣間見えた気がした。
(舞祭組・玉ソロダンス、藤北衣装替え)
衣装が赤と黒のコートみたいなジャケットで本当にカッコいい。横尾くんが完全にどこかの国の帝王だった。
28.Hair
北山くんがどこかのインタビューでこれをコンサートに入れることを匂わせていた記憶が。キスマイの中で最も好きな曲なので本当に嬉しい。セクシー通り越してエロ曲。衣装のカッコよさも相俟って会場から悲鳴が上がった。
29.FIRE BEAT
今回はメンステからバクステへの移動で外周を練り歩くのに使われた曲。ダンス曲だと思ってたが練り歩くのも帝王感が増してカッコいい。バクステに集まって全員で最後に頭を振るの本当にカッコいい。
30.Eternal mind
ここまでの流れがアツ過ぎるが、ここから本当に火が出て熱くなる。特効花火大会。去年のTake overに続き、過去のアルバム曲をこんなクライマックスに持ってくること自体が奇跡的。ファンの妄想レベルのセトリに鳥肌が立った。ハードロックなキスマイが大好きだ。これからも時々やってほしい。
31.サクラヒラリ
センステに移動し、怒涛のロック続きで最高潮となったテンションを収束に向かわせる役割を担ったのがこの曲。キスマイの物語を「桜が咲いた」と象徴するこの曲に、ペンライトでピンクのウェーブをする演出がハマった。全員のソロパートがあるので、普段のキスマイとは変化した姿に見える。
32.Kiss&Peace
赤と黒のジャケットを脱いで、メンバーカラーのハットとバンダナを付ける。ブランコに乗って空高くから平和を歌う柔らかい歌声が降ってくるエンディング。平和を歌ったり、楽曲が普遍的なポップスっぽいのがすごくSMAPっぽい。キスマイでは少し新しいタイプの曲だと思う。手を繋ぐ演出はキスマイが上手く促してくれるのでスムーズで、多幸感もあって良かった。
EC1.やっちゃった
コンサート終盤でこれを踊れるのか心配していたらバンドだった。テンポがめちゃくちゃだったが、ベースの二階堂くんのギターの横尾くんが最後に背中合わせになる所なんてとてもアツい。横尾くんのソロは置きに行って歌ったのでいつもより断然上手で、ロックバンドみたいですごくカッコよかった。舞祭組の魅力は必死さなので、二階堂くんあたり歌とダンスに余裕が出てきてしまった今、バンドを披露するのは良い演出だった。
EC2.Thank youじゃん!
かわいくてキャッチ―で、今までのキスマイにはなかったパターンの曲だ。歌詞はキスマイのストーリーに乗せてあるので、アンコールの自由さがピッタリ。ツアーTが今年は白地1色で、誰が何色ということはなかった。みんなで踊れるので純粋に楽しい。
WEC1~4.光のシグナル・アイノビート・Shake It Up・キミとのキセキ
トロッコで外周を一周する間、ワンコーラスずつ歌ったお手振り曲。ここでシングル曲を一気に消化した。だが考え無しにやったのではなく、アンコールに適しているか精査されていると思う。
WEC5.Kis-My-Calling
これがないとコンサートは終われない、と言わんばかり。最後にここまでハイテンションで一体感を出せる曲は他にない。ローラーで会場を回って、全体にお手振りしてくれるので満足感が高かった。
本編が意図的にブロック分けされていたのは去年と同じだが、去年は歌詞や世界観に準拠していたのが、今年は純粋に楽曲のテイストを基準に分けられていた。ひとつのブロックを5曲以内にし、似通ったブロックを離したのも効いている。
楽曲をどう区分するかによって、なんとなく製作側がどう分類してるか見えた気がする。特にワナビーの配置はかなり意外だ。③に分類したい曲がたくさんあることがすごく嬉しい。
改めて構成をまとめると、
①オープニング:Brand New World~Kiss魂~Everybody Go~運命Girl
アルバムリード曲・最新曲・デビュー曲という「絶対冒頭でやるべき曲」の流れの後に、運命Girlが来るのがミソだ。ローラー曲で且つ序盤に相応しい盛り上がり曲にこれが選ばれた。
②物語:FOLLOW~Luv sick~アナフュ~if~君にあえるから
ブロックとしてまとまりを失いかねない選曲なのに、物語として成立していた。偶然でも、こうしたセトリによって生まれる物語もコンサートの醍醐味だと思っている。このブロックのMVP曲を選ぶならifだ。FOLLOWの平行世界として、暖かみと切なさが良いバランスで機能していた。
(BL・わんダフォー)
③爽やかカッコいい:Shake body~シハハ~キスウマイ~ラキセ~サマラバ
デビュー後のキスマイの王道の中でも、夏らしくて瑞々しい楽曲。このブロックのためにサマラバやラキセを敢えて選んできたのは正解だ。①や⑤との区別にもポリシーが感じられる。
④おふざけ:棚ぼた~てぃーてれ~アゲてくぜ~大喜利~ドキドキ
大喜利を挟んでのおふざけ・かわいいブロックだったが、フェアリー衣装のまま曲をやって、間延びした印象を持たせなかったのも良い工夫だ。
⑤キャッチ―明るい:ビーナス~Halley~ワナビー
これも①③と似た王道キスマイカッコいいブロックだが、ポップス要素も強めに入ってくる印象だ。少し懐かしい歌謡曲調な要素もある。今後のシングル曲なんかはこのあたりを王道にしていったら良いんじゃないかなあ、なんて。
(Double Up・証)
⑥ロックセクシー:FIRE!!~Hair~ファイアビ~エタマイ
裏王道、デビュー前のキスマイである。藤北曲が2曲続くが、楽曲の系統で言えばFIRE!!からがこのブロックだろう。ダークで色っぽい、KAT-TUNっぽいキスマイ。出来ればいつまでも組み込んで欲しい要素だ。
⑦エンディング:サクラヒラリ~Kiss&Peace
この2曲が今までのキスマイ楽曲と違うのは、とてもSMAPっぽいポップス調だったことである。去年の僕らの約束とは全く異なる。どちらもロックバンドでは恐らくやらない、普遍的なポップスらしい曲だ。
ひとつだけ言うならば、「鏡の中の世界」「ファンタジー」という設定を提示したのだから、もう少しリンクしていたら効果的だったのではないだろうか。ギミックが効いていたのは②だけで、あとは最初に提示していた「集大成」というシンプルさの方がしっくり来る。プレーンなキスマイを見せてくれるのも嬉しいが、そのうちコンセプト的なコンサートもやってほしい気持ちもある。
③と⑥で盛り上がりつつ④もあって⑦で締めくくるのが、現在のキスマイのテンプレートなのだろう。この先どのぐらいこれを踏襲するのか、逆に打ち壊してくるのか。数少ないバラードシングルをリリースした後ということもあって、来年のコンサートが今から楽しみである。
DVDが発売されたら、そちらについてもレビューしたい。